2018年04月28日
長谷川きよしコンサートへ

久しぶりに音楽のコンサートに行って来た。4月26日の夕方6時半から佐賀市文化会館で開かれた、「長谷川きよし&パトリック・ヌジェ」のステージだ。恥ずかしながらこれは、筆者が東京から佐賀に帰って来て初めてのコンサート。むこうに住んでた頃はけっこう色んな所で色んな音楽を聴いたものだが、今回は本当に久々にナマのコンサートの雰囲気を味わわせて貰った。ビールもそうだが、やっぱりナマは良いもんだ!
実は筆者はむかしから長谷川きよしの大ファンで、この人のナマ歌を聴きに行くのは今回で7回目。思えば、FM放送のスタジオや「新宿ルイード」でのライブ、ときには赤坂「草月ホール」でのコンサートと、色んな所に出掛けたものだ。前回聴いたコンサートは、有楽町の読売会館7階にある「よみうりホール」のもので、当時このビルは「有楽町そごう」が入っていたが、今は「ビックカメラ」に衣替えしている。つまり、あれからずいぶん時間が経っている。そしてそのときのステージもまた、「長谷川きよし&パトリック・ヌジェ」の組合せだったなあ。
フランス人のヌジェとのコンビとなれば、当然、歌の曲目もシャンソンがメインになる。今回のオープニングは「パリの空の下」で、他にも「雪が降る」「愛の讃歌」「私の回転木馬」などなど、レパートリーには懐かしいシャンソンの名曲が並んだ。その中に持ち歌の「別れのサンバ」や「黒の舟唄」「灰色の瞳」といったお馴染みの曲が挟まれ、エンディングがまたシャンソンの名曲「そして今は」、アンコール曲も「ラ・ボエーム」という、パリの香り溢れる構成になっていた。いやー、パリは懐かしい!(1回しか行ったことないけど…。)
ギターの弾き語りというスタイルなので、長谷川さんはよくフォークシンガーと間違われる。中には「へえ、シャンソンなんかも歌えるんだ?」と思う人もいるだろう。だが、そこが大間違い。このお方、もともとはシャンソン喫茶「銀巴里」で歌い始め、そこから歌手の道に入ったという、根っからシャンソン畑の人なのだ。なので1969年に「別れのサンバ」が大ヒットした後も、今回のコンサートで歌ったような、シャンソンの名曲を集めたレコードを出している。筆者の手元には、そのレコードをコピーしたカセットテープ(古いなあ!)があるが、いま聴くとまだ少年ぽい声ながらも、当時からすでに歌唱力は抜群だ。この人、やっぱり神童だったんだな。
ただしこの人のスゴいところは、ただの和製シャンソン歌手の枠に留まらなかったこと。なにしろデビュー曲が「別れのサンバ」だし、その当時からボサノバのようなブラジル色の濃い曲も歌っていた。そしてそこからフォークでも歌謡曲でもない、独特の透明な味わいを持つオリジナル曲が、次々に生み出されて行ったわけだ。よく聞く「ニューミュージック」という言葉は、1970年代初頭から始まった吉田拓郎らの楽曲を指すようだが、筆者的にはどのジャンルにも当てはまらず国籍さえ不明な、長谷川さんの数々の名曲こそその嚆矢だったと思うのだが…。
ところで長谷川きよしと言えば、その歌唱力とともに評価が高いのがギターテクニックだろう。むかしからサングラス、長髪、ギターというのが、この人のトレードマークになっている。とにかく、シャンソンだろうがサンバだろうがフラメンコだろうが、弾けない音楽はない。それも超絶テクニックで。しかも専門の演奏家ではなく、歌手として歌いながら同時にやるのだから、これはもう天才としか言いようがない。考えてみれば天才ギタリストの伴奏で天才歌手が歌う、これを一人でやってのけるのがそもそも驚きなのだ。同時代の歌手の中で“孤高”のイメージが強いのは、歌もギターもあまりにレベルが高すぎる故だろうか。
筆者が本格的にこの人の曲を聴き始めたのは、1976年に発表されたアルバム「アフター・グロウ」辺りから。この頃になるとシャンソンともボサノバともニューミュージックとも違う、ポップス調のオシャレな曲も歌うようになり、どんどん芸域が広がって行く。そして以降はロックも歌えばジャズも歌い、南米のフォルクローレも歌えば沖縄歌謡も歌うという、恐るべき“きよしワールド”が無限に展開されて行くことになるのだ。こんな歌手、他にいるかなあ?
だが中でも筆者が惹き込まれたのは、やっぱりブラジルの名曲の数々だった。ボサノバもそうだが、激しいリズムのサンバもあれば、美しいメロディのサンバ・カンソンもあるなど、この人にはかの地の音楽の素晴らしさをたっぷり教えて貰った。お陰で筆者は一時、すっかりブラジル音楽にハマり、ジョルジ・ベンなどの古いミュージシャンに憧れたりしたものだ。長谷川さんの出したブラジル音楽のCDでは、1993年に出した「アコンテッシ」があるが、ここに収録されたアルバムと同名の曲「アコンテッシ」こそ、これまでの最高傑作と言っても良いんじゃなかろうか。夜中にこれを聴くと、誰もがゾクッとすることは請け合いだ。
それにしても今回の長谷川きよし、久々にナマで聴かせて貰ったが、歌もギターも少しも錆び付いていなかったのには驚いた。なにしろこのお方も、もうそろそろ70歳に手が届こうとしている。ああそれなのに声質は少しも衰えず、声量はむしろパワーアップしたのではと思わせるほど。ホールの隅々まで、その美声は満ち満ちていた。同世代の歌手たちがだんだん声を失う中で、ここまでパワフルで魅力的な声を保てるのは、やはり不断の節制のたまものなのだろうな。共演のパトリック・ヌジェとのコンビネーションもバッチリで、まさに充実のコンサートだった。
公演終了後、ロビーで発売中のCDを購入し、その特典としてご本人と握手をする機会を得た。握手会というとなんだかAKB48みたいだが、こちらはいたって静かで落着いた行列だ。むろん、筆者も列に並んで長谷川さんと握手をし、ついでに(失礼!)ヌジェさんとも握手。ミュージシャンと接する機会の少ない佐賀で、貴重な体験が出来たってわけ。長谷川さんにはまた佐賀に来て頂きたいが、今度はもう少しキャパの小さい小ぢんまりした場所で聴いてみたい。文化会館中ホールは、こうした弾き語りなどには少々だだっ広過ぎるんでね。
うかがってもよろしいですか?
この歌の題名をごぞんじですか?
くるくる回る風車
くるくるくるくる風の中
あの人はもう行ってしまった
風と一緒に行ってしまった
でも私は泣かない
いままでだってそうだったもの
明日はきっと涼しくなるわ
あの人がもう行っちゃったから
くるくる回る風車
くるくるくるくる風の中
かなり昔のアルバムに入っていた曲だと思うのですが、どうしても思い出せないんです。ネットで検索してもヒットしません。
ご存知でしたら教えてください!
どうしても思い出せないことって、よくありますよね。
歌詞が分かっていてもタイトルが出て来ない曲などは、その典型でしょうか。
これも脳の老化かな?
さて、お尋ねの曲ですが、古いレコードを調べたら分かりました。
タイトルは『風の中』(作詞:津島玲、作曲:長谷川きよし)です。
むかし買った『長谷川きよしゴールデン・セレクション』の中に収められていましたが、初出は『卒業』というアルバム中の一曲のようです。
今は同名タイトルでCD化されているようなので、ぜひ調べてみて下さい。
以上、お役に立ちましたでしょうか。
『風の中』は『ビアーナへ行こう』と共に私が好きだった曲です。
ありがとうございました!