2012年02月25日
駄菓子といえば「雀の卵」
テレビのバラエティ番組で以前、駄菓子の人気ランキングというのをやっていた。この手の番組はあまり好きではないが、わりと面白そうな企画だったので見るともなく見ていたら、そこではいろんなお菓子がランクインしていたっけ。ラムネ菓子やココアシガレット、麩菓子といった筆者らが子供の頃によく食べたものから、よっちゃんイカにベビースターラーメンといった名の売れたものまで、様々な商品が顔を揃え、こちらもつい惹き込まれるように見てしまったね。
番組の趣向はランクの10位から順に商品を紹介し、最後の1位をタレントに当てさせるというもの。筆者はたぶん1位はアレだなと見当をつけていたのだが、残念ながら正解は「うまい棒」という菓子で、みごとにスカを引いてしまった。しかし「うまい棒」なんて、筆者は見たことも食べたこともないもんなあ。これも時代の流れという奴か…。
それにしても筆者のお気に入りのアレは、ベスト10にも入っていなかったが、これにはちょっと異議を唱えたい。安くて美味くて子どものおやつに最適で、おまけに大人のビールのつまみにもなる、スーパー万能駄菓子のアレを忘れるとは、いったい番組の制作者は何を考えているのやら。一度会って両方の鼻の穴に、アレを目いっぱい詰め込んでやろうか──。そんな怒りがフツフツと沸いて来た。そう、むろんアレとは「雀の卵(すずめのたまご)」のことだ。

「雀の卵」とは、筆者がまだ幼稚園の頃から大好物だったお菓子の名前。当時からそう呼ばれ、ふつうに近所の駄菓子屋で売られていたが、その頃の価格は2個で1円だったかな。名前の通り小さな卵の形をしており、カリッと焼いて甘い醤油味をつけた小麦粉の殻の中に、ピーナツが1個入っている。うまそうな茶色の殻には、細く刻んだ海苔などもまぶしてあり、これをサクサクと奥歯で噛み砕くと、口の中に甘い醤油とピーナツと海苔の香りが広がって、もうたまらないほど幸せな気分になれるのだ。
甘いお菓子ではないので何個食べても飽きがこないし、なによりあの醤油味の殻を噛み砕くときの歯触りが何ともいえない。子ども向けの駄菓子なのだが、どこか大人にも合う風味も備わっていて、筆者などはいまでもよく食べている。ビールやワインの脇に置くと、駄菓子とは思えないほどピッタリ合う逸品なんだよなあ、これが。
そんな「雀の卵」の小袋入りは、佐賀ではスーパーの駄菓子コーナーで売られており、大きな袋入りは酒のつまみコーナーでもよく見掛ける。駄菓子のくせに、なかなか活動範囲の広い奴なのだ。ただし、手に取ってよくパッケージを見ると、似たような菓子をいくつもの会社が出していることに、誰もが気が付くだろう。つまりそっくり商品という奴で、名前も「雀の卵」だったりそうでなかったり…。
どうも「雀の卵」は登録された商標なのか、こうしたタイプの菓子の一般名称なのか判然としないのだ。そんな中で、ズバリ「雀の卵」という商品名で販売しているのが、大阪屋製菓という会社であることに筆者はこのごろようやく気が付いた。おお、大阪で作っていたのか──そう思ってパッケージをよく見ると、なんと会社の所在地は鹿児島市になっている。よく分からないが、何だか肩すかしを食らったような。
だが筆者の長い東京暮らしの間にも、向こうではまるでこの「雀の卵」を見掛けなかったことを考えれば、これは案外なるほどと納得が行く話ではある。つまり鹿児島生まれの「雀の卵」は、九州ローカルの駄菓子なのかも知れないのだ。ふんふん、そうかそうかもね。そうだとしたら、東京のフジテレビが制作したランキング番組で、シカトされたとしてもまあシカト…、いや仕方ないかも知れないなあ…。
などと考えながら「雀の卵」の一粒を口に入れると、どうも近ごろのこいつは奥歯の間でサクサクと軟らかく、味も美味しくなっているような気がする。むかしはもっと殻が硬く、こんなに甘口ではなかったと思うのだが…。駄菓子もどうやら時代とともに、大衆の嗜好に合わせて徐々に改良されているのだろう。筆者にとっては昔なじみのこの豆菓子、いつかは全国の駄菓子ベストテンにぜひランクインしてほしいね。
番組の趣向はランクの10位から順に商品を紹介し、最後の1位をタレントに当てさせるというもの。筆者はたぶん1位はアレだなと見当をつけていたのだが、残念ながら正解は「うまい棒」という菓子で、みごとにスカを引いてしまった。しかし「うまい棒」なんて、筆者は見たことも食べたこともないもんなあ。これも時代の流れという奴か…。
それにしても筆者のお気に入りのアレは、ベスト10にも入っていなかったが、これにはちょっと異議を唱えたい。安くて美味くて子どものおやつに最適で、おまけに大人のビールのつまみにもなる、スーパー万能駄菓子のアレを忘れるとは、いったい番組の制作者は何を考えているのやら。一度会って両方の鼻の穴に、アレを目いっぱい詰め込んでやろうか──。そんな怒りがフツフツと沸いて来た。そう、むろんアレとは「雀の卵(すずめのたまご)」のことだ。

「雀の卵」とは、筆者がまだ幼稚園の頃から大好物だったお菓子の名前。当時からそう呼ばれ、ふつうに近所の駄菓子屋で売られていたが、その頃の価格は2個で1円だったかな。名前の通り小さな卵の形をしており、カリッと焼いて甘い醤油味をつけた小麦粉の殻の中に、ピーナツが1個入っている。うまそうな茶色の殻には、細く刻んだ海苔などもまぶしてあり、これをサクサクと奥歯で噛み砕くと、口の中に甘い醤油とピーナツと海苔の香りが広がって、もうたまらないほど幸せな気分になれるのだ。
甘いお菓子ではないので何個食べても飽きがこないし、なによりあの醤油味の殻を噛み砕くときの歯触りが何ともいえない。子ども向けの駄菓子なのだが、どこか大人にも合う風味も備わっていて、筆者などはいまでもよく食べている。ビールやワインの脇に置くと、駄菓子とは思えないほどピッタリ合う逸品なんだよなあ、これが。
そんな「雀の卵」の小袋入りは、佐賀ではスーパーの駄菓子コーナーで売られており、大きな袋入りは酒のつまみコーナーでもよく見掛ける。駄菓子のくせに、なかなか活動範囲の広い奴なのだ。ただし、手に取ってよくパッケージを見ると、似たような菓子をいくつもの会社が出していることに、誰もが気が付くだろう。つまりそっくり商品という奴で、名前も「雀の卵」だったりそうでなかったり…。
どうも「雀の卵」は登録された商標なのか、こうしたタイプの菓子の一般名称なのか判然としないのだ。そんな中で、ズバリ「雀の卵」という商品名で販売しているのが、大阪屋製菓という会社であることに筆者はこのごろようやく気が付いた。おお、大阪で作っていたのか──そう思ってパッケージをよく見ると、なんと会社の所在地は鹿児島市になっている。よく分からないが、何だか肩すかしを食らったような。
だが筆者の長い東京暮らしの間にも、向こうではまるでこの「雀の卵」を見掛けなかったことを考えれば、これは案外なるほどと納得が行く話ではある。つまり鹿児島生まれの「雀の卵」は、九州ローカルの駄菓子なのかも知れないのだ。ふんふん、そうかそうかもね。そうだとしたら、東京のフジテレビが制作したランキング番組で、シカトされたとしてもまあシカト…、いや仕方ないかも知れないなあ…。
などと考えながら「雀の卵」の一粒を口に入れると、どうも近ごろのこいつは奥歯の間でサクサクと軟らかく、味も美味しくなっているような気がする。むかしはもっと殻が硬く、こんなに甘口ではなかったと思うのだが…。駄菓子もどうやら時代とともに、大衆の嗜好に合わせて徐々に改良されているのだろう。筆者にとっては昔なじみのこの豆菓子、いつかは全国の駄菓子ベストテンにぜひランクインしてほしいね。
2012年02月06日
皮肉の利いた『ロボジー』

「ロボジー」と聞いて、テクノロジーとかバイオロジーの親戚を連想したら、大きな間違い。正しくは「ロボ爺」と書くのだろうが、つまりはロボットの着ぐるみの中に入る爺さんのお話…。そんな奇妙な映画、矢口史靖監督の「ロボジー」を観て来た。筆者は奇妙な映画が大好きなのだ。
白物家電メーカー・木村電器の社員である小林・太田・長井は、社長の無理な命令で、ロボット博に出展するための二足歩行ロボットを開発中だが、期限まであと一週間というところで試作機「ニュー潮風」が大破。困った三人はロボットの着ぐるみでごまかそうと、中に入る人物を選ぶためオーディションを行う。で、選ばれたのが独り暮らしの不平爺さん、鈴木。体形と腰痛持ちの歩き方が、ロボットにピッタリだったのだ。
爺さん扮するロボットはスムーズな動き(そりゃそうだ)で無事、ロボット博を切り抜けるが、そのとき偶発事故から救った女子大生・葉子に、今度はつきまとわれるハメに。葉子は熱烈なロボットオタクで、かつデキる工学生だったのだ。おまけに「ニュー潮風」が評判となり、鈴木のお座敷が増えるという予想外の展開で、今度は図に乗った爺さんの横暴がヒドくなって行く…。
ここまで書いただけでこの映画、何となくニヤニヤしてしまうほど。とにかく意外な展開の連続で、話が転がるように進んで行くのだから面白い。流行に便乗しようとする調子のいい家電メーカーの社長に、徐々に身勝手ぶりを増大させて行く不平爺さん、さらには鉄砲玉のような女子大生がそこに加わり、振り回される三人の社員の困り果てた姿がたまらなく可笑しい。ある意味、これは“サラリーマン哀歌”ともいえそうだ。
だがこの映画の魅力はまず、着想の奇想天外さにあるのだろう。何といっても、時代の先端を行くヒト型ロボットと、時代から取り残された爺さんを組合せるという、そのアイデアが素晴らしい。腰痛持ちの爺さんがロボットに入り、歩く姿を想像するだけで、誰もがきっと笑ってしまうもんね。もっとも腰を落とした両者の歩き方は、よく見れば元々とても似ているのだが…。
しかも主人公の不平爺さんを演じるのが、新人・五十嵐信次郎ときている。だが、これはただの爺さんではない。何を隠そう元祖ロカビリー歌手で、かつ作曲家にして怪優さらには落語家、おまけにライダーとしても知られる、あのミッキー・カーチスの別名なのだ。人を食った演技はお手のものだが、主人公のキャラクターにこの人の地がよくマッチしていて、とにかく楽しい。エンドロールに流れる「ミスター・ロボット」では、自慢ののども披露しているしね。
ところどころ強引な筋の運びもあるが、これは全体でみれば最後まで楽しめるコメディ映画の佳品だろう。しかも面白いだけじゃなく、ヒト型ロボットの開発に血道を上げる日本人の滑稽さに、けっこう痛烈な皮肉をカマしてもいる。外国人がこの映画を観たら、きっとゲラゲラ大笑いをするんじゃないだろうか。冷静に考えれば、ロボットに二足歩行をさせ踊りを踊らせて悦に入っている人間の姿は、マンガそのもののはずだものな。
そういえば日本が誇るヒト型ロボットは、現実に起きた福島の原発事故現場では、屁の突っ張りにもならなかった。この国では人間そっくりのロボットを作ることと、人間の役に立つロボットを作ることは、まるで別方向を向いているようだ。筆者にはヒト型ロボットなどよりこれからは、老人パワーを有効活用した方がはるかにマシ、とこの映画が言っているように思えた。