2024年06月30日

「SUMO」をオリンピックに

「SUMO」をオリンピックに

今年は4年に1度のオリンピックの年だ。今回は7月26日から8月11日までの17日間、フランスのパリを舞台に開催される。筆者もいまから楽しみにしているが、テロなどもなく無事に始まり無事に終わって欲しいもの。で、個人的には今回こそサッカーで、日本代表にメダルをとって欲しいと願っている。なんたって、日本が銅メダルを獲得したメキシコオリンピックは、今からもう56年前の1968年のこと。早いものであれから幾星霜、その記憶もすっかりカスミの彼方だ。釜本邦茂氏や松本育夫氏など、当時のメンバーが存命のうちにぜひとも日本に朗報を届けて欲しいね。

しかし、最近のオリンピックで筆者が気になるのは、ときどき変な種目が正式採用されていること。へえ、こんなのがオリンピック種目?と、疑問符が付くようなものもたまにある。今回でいえば「ブレイキン」などがそうだ。ブレイキンは「ブレイクダンス」とも呼ばれ、音楽に合わせて床の上でグルグル回ったり跳ねたりする、イカれた若者の自己主張といったダンス。まあ、やりたい奴らはやれば良いと思うが、筆者的にはどうも不良の遊びにしか見えないんだよね。脳天を床につけてコマみたいに回ったりしてると、そのうちハゲるぞと忠告したくもなる。こんなのがスポーツ(失礼!)というのなら、他にもっと面白い種目があるんだけどねえ。

そこで筆者が推薦したいのは、ズバリ「相撲」だ。相撲は日本発祥の格闘技だが、世界中には似たような競技がいくらでもある。つまり、ブレイキンなどよりもはるかに裾野が広い。しかもルールはごく単純で、丸い土俵から相手を押し出すか、体の一部を土俵に先につかせれば勝ち。実にわかりやすい。短時間で勝負が決着するため、同じ組み技系格闘技でも、柔道やレスリングみたいに微妙な判定でモメることもない。だいいち裸の男どうし(まあ、女どうしでも良いが)、ガツンとぶつかり合って一瞬で勝負の決まる相撲は、エンタメとしても面白いじゃないか。オリンピックでも、老若男女に人気が出ること間違いなしだ。

もともと大相撲はNHKの海外向けテレビ放送もあり、外国人にも知られていた。古いところではフランスの元大統領・シラク氏は、大の相撲ファンとして有名だったし、イギリスの著名な動物学者だったライアル・ワトソン氏などは、〝相撲評論家〟を名乗っていたっけ。近年ではインターネットの配信により、世界中で大相撲の動画が視聴できるようにもなった。これに輪をかけて、大相撲の力士にも外国出身者が増えてきた。かつては曙・武蔵丸などハワイ生まれの大型力士が活躍したが、最近ではモンゴル勢を筆頭に、東欧のジョージアやブルガリアなど、その国籍も多様化している。大相撲もいまや国際化の時代なのだ。

そんなわけで、大相撲に注がれる目も国際化しているが、そうなると当然、外国でも外国人どうしによる相撲大会が開かれたりする。オレたちもやろうぜ!というわけだ。あまり日本では報道されないが、実はアマチュア相撲ではヨーロッパやアメリカで、相撲大会が開かれている。デブの本場のアメリカでは、「全米相撲全国選手権大会」なるものもあるそうだ。もっと世界的なのが国際相撲連盟が主催する「世界相撲選手権大会」で、これは各国持ち回りで1992年から毎年開かれている。男子と女子(2001年から)があり、体重別にクラス分けして世界中の猛者が闘う大会だが、初期の頃は各階級を日本勢が席巻していたものの、近年はモンゴルやロシアやウクライナなどに覇権を奪われている。これは、ちょっとヤバイなあ。

筆者が最近、ユーチューブで観て面白かったのが「US SUMO OPEN – 24th Annual」というイベント。この「US相撲オープン」とは、2001年から毎年アメリカで開催されている相撲の国際大会で、今年で24回目を迎えたものだ。同イベントのウェブサイトによれば、世界40カ国から集まった国内および世界の相撲チャンピオンが、トーナメントで勝敗を競う北米で唯一の相撲イベントだという。そのため、厳密に言えば日本の相撲とは少し違う、国際化したルールになっている。

たとえば土俵は土ではなくマットになっており、力士も体重別に何階級かのクラス分けがしてあった。また、まわしの下のスパッツやタトゥーもOKで、土俵に上がってからの蹲踞や柏手・塵手水という一連の所作などはイマイチ。それでも登場する各国代表はしごく真面目で、日本人の行司の指導にしたがい真剣勝負を繰り広げていた。なんたってルールが単純なので、アメリカ人にも分かりやすい。レベル的に日本の大相撲には遠く及ばないものの、肉弾相撃つ好勝負の連続に、満員の観衆は大喜びだったね。このイベントの良いところは、日本へのリスペクトが感じられることで、土俵のそばのゲスト席には、大相撲を引退したあの逸ノ城の姿もあったっけ。

格闘技のイベントとしてみれば相撲は、プロレスと違ってガチンコ勝負の緊迫感があるが、総合格闘技みたいな凄惨な感じはしない。そればかりか元々が神事なので、礼に始まり礼に終わる動作は、見ていてもすがすがしい。家族で楽しめる格闘技といえば、相撲に勝るものはないだろう。ぜひ日本が誇るこの相撲が、世界に広まることを筆者は願いたい。ただしそこに一つ注文があるとすれば、あまりにショー化し過ぎないで欲しいということだ。そもそも土俵は、神様が宿る神聖な場所。四股や蹲踞といった美しい所作や、対戦相手へのリスペクトなど、外国人にも相撲の伝統をよく理解してもらいたいね。その意味で力士を目指す外国人は、周防正行監督の名作映画『シコふんじゃった。』を、まず観るべきじゃなかろうか。



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Posted by 桜乱坊  at 11:59 │Comments(1)スポーツ

この記事へのコメント
面白く拝読しました。柔道がジュウドウとして完全に国際的競技に手定着しました。相撲SUMOとして国際競技になる日が来るかもしれません。知っているのは韓国相撲、モンゴル相撲ですが、ルールは違います。各国にも似たり寄ったりの格闘技があるでしょう。しかし、着衣、土俵に代わる格闘技の場、勝負の統一ルール、体重別などを克服せねばなりません。剣道はすでに国際選手権試合が何十年と開催されています。ご存知と思いますが、小城高の体育教員がカナダでの大会で世界一になりました。小城では有名な話だと思います。その先生は、その後流通経済大学の職員になりました。その剣道の教え子が私の配下に配属になって「素晴らしい先生」と自慢しました。人生の巡り合わせとは面白いものです。
Posted by 桜田靖 at 2024年07月13日 14:46
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