2011年04月23日
日本はロボット大国?

先日の大震災で大きな被害を受けたのが、東京電力の福島第一原発だ。水素爆発で「建屋」と呼ばれる原子炉を覆う建物が吹っ飛び、放射能漏れを引き起こすという最悪の事態となってしまった。壊れた建屋の中は放射線量が高すぎるため、人間が入って調査することが出来ない。
で、こんなとき活躍するのがお前だ、ということで投入されたのがロボット。何といっても日本は、自他ともに認める「ロボット大国」だ。さぞかし格好いいスーパーロボットが、日の丸を付けてがれきの山に突入するはずと筆者が思っていたら、なんと実際に投入されたのはアメリカ製のもの。しかもキャタピラの上に長いアームが付いただけの、ずいぶんシンプルな(というか野暮ったい)形をしていたのには驚いた。こんなので大丈夫なの?
ところが、調べてみたらさらにビックリ。これは、アメリカのアイロボット社が開発した多目的作業用ロボットで、その名は「PackBot(パックボット)」。危険で悪環境の場所で人間に代わり作業をするという、実用本位につくられたロボットのようで、すでに世界の紛争地域や2001年のアメリカ同時多発テロの現場でも、バリバリ活躍した実績を持つのだとか。つまりこれ、意外にも百戦錬磨のタフな兵士だったのだ。これでは、日本のロボットは太刀打ち出来ないなあ。
なにしろ「ロボット大国」とはいえ、日本のロボットで連想するのは主に、ホンダが開発した「ASIMO(アシモ)」のようなヒト型ロボットか、自動車の生産工場などで使われる産業用ロボット。どちらもそれぞれの分野では、世界のトップを行く技術を集積したものなのだろうが、しかし悲しいかなこれらは平時用だ。ASIMOはショーのステージで踊ったりコーヒーを運んだりは出来ても、がれきの山に踏み込むことは一歩も出来ないだろうし、産業用ロボットは工場内の作業にのみ特化されており汎用性がない。
つまり、日本にはスマートで優れたロボットを作る技術はあっても、事故や災害などの危険で悪環境の場所に踏み込み、人間に代わって調査や救助をするといった、非常時に活躍できる実用ロボットの開発についてはあまり熱意がないらしい。そういうことになる。仮にパックボットのようなものを作った技術者がいたとしても、過去、実際にそれが使われたという話は寡聞にして聞いたことがない。まあ実戦経験がない以上、今回のような緊急時には経験のあるベテランに任せざるを得ないのは、残念だが仕方がないだろうな。
なぜこうなったかについてはいろんな理由が考えられるが、まず「鉄腕アトム」を生んだ国ゆえの、ロボット=ヒューマノイドという偏った刷り込みの影響も大きいだろう。あるいはアメリカのように、軍事用に開発した技術を民生に転用するという方法も、平和憲法のあるこの日本では難しい。逆に災害時の救助ロボットなどを開発したとしても、軍事転用の危険性があるなどと、イチャモンをつける変な人だって現れかねない。つまり、ロボットは平和で安全なものにしか使えないという、おかしな国なのだ日本は。
かくして福島第一原発の現場で、アメリカ製ロボットに先を越されたわけだが、しかしこれではいかんとついに日本の科学者が立ち上がったらしい。4月22日付けの朝日新聞サイトの記事によれば、いよいよ次はロボット大国の威信をかけて、国産ロボットが投入されるのだとか。その名は災害救助用ロボット「Quince(クインス)」。千葉工業大未来ロボット技術研究センターや、東北大の科学者らが開発したもので、2009年のロボカップレスキュー世界大会では、運動性能部門とアームの性能部門で優勝したというツワモノだ。
だったら最初から出せよとツッコミを入れたくもなるが、まあ実戦経験がないのが辛いところなのだろう。コンテストと実際の現場とでは、まるで違うはずだからね。このクインス、写真で見るとキャタピラの上に長いアームが付いただけの、シンプルなデザイン……。というか、パックボットとそっくりなのがちょっと残念だが、ロボット大国の名誉回復のために、そして日本人のロボットへの固定観念を変えるためにも、ぜひとも活躍して欲しいものだ。
2011年04月06日
大地震そして4月

このところサボって来たブログの更新。何といっても東日本を襲った大震災のショックが大きかったし、その次は筆者自身が体調を崩しての入院などがあり、あっという間に3月が過ぎ去ってしまったというわけ。気が付けばもう桜満開の4月だものなあ。時の過ぎ行くのは早いものと、つくづく思い知らされる。
今回の震災だが、東北地方の被害の甚大さには、あらためて驚かされるばかりだ。なにしろ巨大津波で、大きな町ごと根こそぎ海にさらわれた地域もある。自然界の無限のパワーの前には、人間の力など無に等しいということだろうが、それにしても亡くなられた方々は本当にお気の毒だ。同じ地震列島に住む日本人なら、誰も人ごととは思えないだろう。
筆者には東北地方に知人はいないものの、これまでの人生の半分以上を過ごして来た関東地方には、多くの友人知己が住んでいる。なので地震直後に早速メールでお見舞いを送ったところ、多くの友人たちが返事を返してくれた。ふだん返事などよこさないタイプの知人からも、長いメールが届いたりした。誰もが動揺しているらしいのが、何となく分かった。
幸いなことにケガ人などは誰もいなかったが、被害は決して小さくはなかったようだ。いちばん被害を受けたのは、やはりマンションなどの高層ビルの住民らしい。東京都内や埼玉県、神奈川県などのマンションの高い階に住む友人たちは、口を揃えたように長い揺れが続き船酔い状態になったという。で建物自体は無事だったものの、本棚が倒れ食器棚が壊滅し、家の中が滅茶苦茶になったという話が圧倒的に多かったな。中には仏壇が飛び散ったという同業の先輩もいたけど、これはお気の毒…。
都下のマンションの6階に住む友人一家は、未体験の恐怖を覚えたといい、本震のあとに続く余震にも脅かされ、しばらく夜は服を着たまま寝たという。ビルの高い階ほど揺れは増幅するから、住んでる人はたまったものではないだろうが、それにしても関東地方の揺れも相当なものだったようだ。高層マンションは、やはり地震と火事にはちょっとリスキーだね。
あと外出先で地震に会い、帰宅難民になったという友人もいた。彼はたまたまそのときお台場にいたらしいのだが、帰宅の交通網が完全にマヒしたため、その日は近くの国際交流センターのホールで一夜をすごし、翌日の昼に隣県の自宅に戻れたという。ただし、当夜は備蓄されていた食料や水が提供され、避難者はみな秩序を守って行動し、雰囲気は大変良かったらしい。こういうのを聞くとどこかの国とは違い、日本はやはり素晴らしい文明国なんだなあと思わされる。
まあ佐賀に住んでると、むこうでの揺れがどれほどだったのかを想像するのはなかなか難しいが、中にはその瞬間に死を覚悟したという友人もいるから、きっと尋常ではなかったのだろう。今回の地震が、建物や交通インフラなどだけではなく、人間の心に大きな傷痕を残したのも間違いないはずだ。被害を免れたわれわれ西日本の住民は、まずはどうすれば彼らを励まし、元気づけられるかを考えるべきだろう。
そういえば先日、近くのドラッグストアに行ったところ、ミネラルウォーターのペットボトルが品薄になっていた。えっと思ったが、これはおそらく佐賀県民が自分のために買い溜めているのではなく、被害にあった地域に住む親戚や知人に送るため購入しているからなのだろう。そう思えば、この現象も理解が出来る。何といっても一つになって助け合うチームワークこそが、日本人の真骨頂なのだから。筆者もしばらくは、不要な水や乾電池などは買わないことにしようっと。