2012年06月02日

日本代表のユニフォーム



いよいよサッカーのブラジルW杯アジア最終予選が迫って来た。早くも胸の高まりをおぼえる筆者だが、今回は日本代表に故障者もなく、フルメンバーが顔を揃えるので楽しみだ。何といっても膝のケガから回復した大黒柱・本田圭佑と、今季ドイツで大活躍し近くマンU入りが噂される香川真司という、攻撃の二枚看板が久しぶりに同じピッチに立つわけで、このコンビからどんなゴールが生まれるのか、ワクワクしているファンも多いことだろう。

ザック監督のメンバー選考もほぼ順当だ。センターバックに闘莉王がいないのはやや不安だが、他には19歳の期待のFW・宮市亮や、FC東京のボランチ・高橋秀人を選出するなど、先を見据えた布陣なのも気に入っている。ザッケローニという人は、Jリーグにしろ海外のクラブにしろ、日本人選手のことを本当によく見ているものだと感心する。

そんな期待ギンギンの日本代表だが、筆者には一つだけ不満なことがある。といっても別にザックや選手について、どうこういうわけではない。むろん、FW・岡崎慎司の無精髭がショボイということでもない。不満というのは、今のユニフォームのデザインについてなのだ。要は配色といいレイアウトといい、もう史上最低レベルと言っていいほどのダサさが、どうにも我慢出来ないってこと。

日本代表の代名詞といえば「サムライブルー」。むろん、ユニフォームの色から付けられたニックネームだ。これまで歴代の代表チームが身に付けて来たユニフォームは、それぞれ多少の濃淡や系統の違いこそあれ、鮮やかな青というのが基本だった。青い色は競技場のカクテル光線にもよく映え、日焼けした代表選手たちの顔をキリッと格好良く見せたりもする。つまりクールな色なのだ。

ところが、現在の代表ユニはそうではない。まずメインカラーがどう見ても、青というより青味がかったダークグレーだ。しかもこの色が、どうにもモッサリしていて美しくない。ネイビーブルーか何か知らないが、渋いというよりはなんだか華やかさに欠けるジジ臭い色なのだ。そのくせまるで言い訳でもするかのように、肩と袖の裏の部分だけが明るい青になっていて、しかも肩の上部には取って付けたようにアディダスの白い三本線まで入っている。全体にバランスの悪い、つぎはぎのようなデザインになっているのだ。

おまけに最悪なのが、首から裾まで真下に伸びた赤いライン。誰が考えたのか知らないが、これじゃまるでユニのファスナーだ。日の丸の赤をアクセントカラーにしたつもりなのだろうが、目立ちすぎることこの上なく、これでは「サムライブルー」のイメージが吹っ飛んでしまう。さらにこのシャツをパンツの外に出して着ると、日本人の胴の長さが強調されてしまい、選手にとって良いことは一つもない。

しかもパンツの色もこれまでのように白ではなく、シャツと同じ青味がかったダークグレー。なので身に着けた選手の印象は全体に暗く、全身から颯爽とした若さが感じられないのだな。これでは選手たちが可哀想。アウェイ用の白いユニの方がはるかに格好良く見えるのは、たぶん筆者だけではないはずだが…。

ちなみに、前回の南アフリカW杯で日本代表が着たユニは、筆者的には悪くないと思っている。首の下のレッドカードのような赤いアクセントが当初は非難されたりもしたが、メインカラーのやや紫系の深い青が美しく、全体的にはカチッとシンプルデザインで良かったんじゃないのかな。カタールのアジアカップで劇的な優勝を飾ったのも、このユニだったしね。

まあW杯の代表ユニでいうなら、やはりいちばんスマートで格好良かったのは、ドイツ大会のジーコジャパンだったと筆者は思っている。日本刀の刃文をイメージしたという水色のウェーブラインが、青いユニの両脇あたりに配され、とにかくオシャレな感じがしたものだ。これで戦績の方も格好良かったら言うことなしだったのだが、世の中そうは行かないもので、このユニには今も中田英寿の涙とともに苦い記憶が重なっている。

あと、日韓大会のトルシエジャパンのユニも、シンプルな青と白の組合せで悪くなかった。だが、どうもこの大会といえば初戦のベルギー戦で選手たちが着た、アウェイ用の白とグレーのユニの印象が強過ぎる。そう、鈴木隆行が運命の“ツマ先ゴール”を決め、稲本潤一が躍動したあの試合だ。彼らの金髪とアウェイ用のユニフォーム──これは筆者だけではなく、おそらくあの試合を観た多くの日本人が共有する、強烈な民族の記憶なのかも知れないな。

そして、日本が初めてW杯の舞台に立ったのがフランス大会。このときのユニは青地に赤の火炎模様入りだったが、どこか縄文の火焔土器を思わせるデザインが土臭く、実は個人的には筆者のいちばんのお気に入りでもあるのだ。なにしろ、出場した選手たちは全員がJリーガー。いかにも「極東の田舎から来ました」という感じで、誰もが初めて立つ大舞台にガチガチに緊張し、国際経験のなさを露呈して3連敗。だが、そんな土臭い初々しさとこのユニは妙にマッチしていて、敗れはしたものの、今でもそこがなんとなく微笑ましいんだな。白い襟も印象的だったし…。

そんな歴代の思い出深いユニフォームに比べても、現代表のそれはひどくジジ臭く格好悪い。やはり「サムライブルー」を名乗る以上は、美しい青の伝統を踏襲した、爽やかな若者らしいデザインにするべきだろう。そうでなくては困るのだ。なぜなら国際大会では、日本人の美意識も試されているのだから。日本代表が無事に最終予選を突破し、晴れてブラジルW杯の舞台に乗り込むときには、ぜひ協会が素晴らしいユニを新調してくれることを願っている。  


Posted by 桜乱坊  at 14:00Comments(0)スポーツ