2022年12月31日

サッカーは何が起きるか分からない

サッカーは何が起きるか分からない

なんだか随分と遠い日のことのように思えるのが、カタールで行われたサッカーのW杯だ。日本時間で12月19日午前零時、つまり18日の深夜に始まったアルゼンチン対フランスの決勝戦は、振り返ってみてもスゴい試合だったなあ。35歳の絶対エース・メッシ率いるアルゼンチンと、23歳の怪物・エンバペ擁するフランスの対決は、最後の最後まで手に汗握る撃ち合いとなった。だが結局は勝負がつかず、PK戦でアルゼンチンの勝利という劇的なフィナーレ。おそらく最後のW杯となるメッシには、ハッピーエンドとなったわけだが、それにしても神様だってこんなシナリオは書けなかったはずだ。

いや、誰もこんなシナリオを書けなかったという点では、わが日本代表の戦いぶりもそれに該当することだろう。何しろ1次リーグのグループEで対戦する相手は、ドイツ、コスタリカ、スペインの3カ国。この組み合わせが決まったとき、ほとんどの日本人は「アイタ~!」と落胆したはずだ。というのも、ドイツ、スペインの2国は世界に轟く強豪国。ともに優勝経験があり、この大会でも優勝候補の一角を占めていた。この2国には良くて1敗1分けと見込んで、コスタリカには必勝し、1勝1敗1分けでなんとか16強入り出来ればというのが、大方の専門家の希望的観測だった。

ところが、開けてビックリ玉手箱。初戦のドイツ戦では前半に1点先取されたものの、後半に攻撃陣全投入という、それまでやったことのない森保監督のバクチあたり、堂安の見事な同点ゴールが決まる。直後には板倉のロングキックを、浅野が一生一度の神トラップから、名キーパー・ノイアーの度肝を抜く逆転ゴール。あとは必死に守りきって、2-1で奇跡的な勝利を奪い取った。日本が真剣勝負でドイツを破るという、世界をアッと驚かせる1勝だったね。

ところが、ここでスンナリ行かないのが森保ジャパン。勝てると見込んだ次のコスタリカ戦では、ターンオーバーが裏目に出て0-1でまさかの敗戦。「やっぱり無能監督」の声が、日本中で溢れたものだ。そして最後にいよいよ、運命のスペイン戦。前半であっさり1点を決められ、もはやこれまでと覚悟を決めた後半、投入された堂安がスーパーゴールを突き刺したときには、筆者も夜明けのテレビの前で、思わず絶叫してしまったね。さらに、三笘の「ウソだろ~!」というセンタリングを、田中碧がヒザで押し込んでついに勝ち越し。日本は2-1の奇跡の逆転勝利で、またまた世界を驚かせた。結果、1位でグループリーグを突破し、「さすがは有能監督」の声が日本中で溢れたものだ。

しかし、絶対勝つはずだったコスタリカに敗れ、ヤバい相手のはずだったドイツ・スペインに日本が勝利するとは、お釈迦様も予想しなかったことだろう。なにより、あの保守的な森保監督が本番の舞台で、攻撃陣全投入という大胆采配を振るうとは、筆者だって考えもしなかった。これは、リハーサルまで声の出なかった歌手が、本番になって人が変わったように、素晴らしい声で歌ったようなもの。人間、いざ本番の舞台に立てば、それまで出来もしなかったことが、出来るものなんだな。いや〜、サッカーは何が起きるか分からない。

残念ながら8強入りを懸けたクロアチア戦では、相手得意の引き分けに持ち込まれ、PK戦のすえ日本は敗退してしまった。だが、大方の予想を裏切ってグループリーグで、ドイツ・スペインを撃破した事実は、日本国内のみならず世界に衝撃をもたらした。なのでYouTubeでは、スタジアムの観客席やスポーツバー、また飲食店や自宅などで撮られた、日本の勝利に狂喜乱舞する人々の動画が、いくらでもアップされていたっけ。なにしろテレビのカメラと違って、撮影したのは一般人。撮った本人がいちばん叫び、かつ飛び跳ねている。ブレまくる画面からは現場の興奮が、臨場感と共にヒシヒシと伝わって来たなあ。

もっとも、日本国内の飲食店や自宅だったら、集まった連中が大喜びするのも良く分かる。だが意外だったのは、スタジアムやその周辺で日本を応援し、祝福してくれる外国人がけっこう多かったことだ。日の丸ハチマキをしたり、サムライブルーのユニフォームを着たりして、一緒に手を叩き喜んでくれる彼らの姿には、筆者もつい胸が熱くなってしまったね。ひとつには地元・カタールが産油国で、石油を買ってくれるお客様の日本には、好感情があったことが考えられる。またイスラム教国の中東人なら、同じアジアの非キリスト教国である日本の方を、応援したくなるのは当然だったろう。それ以外の外国人は、強国ドイツ・スペインに健気に立ち向かう、弱者日本への判官贔屓もあったんじゃなかろうか。

しかしそれらの数多い動画の中で、最も筆者を驚かせたのは、中国のある女子大生がアップしたものだった。そこはどこかの大学の学生寮らしき施設で、大勢の中国人学生が観ていたテレビの大画面に、映っていたのはW杯の日本対ドイツ戦。ワイワイ騒ぎながらみんな試合に熱中していたが、彼らが応援していたのはなんと日本だったのだ。これには筆者もビックリ! なにしろ、反日教育を受けたはずの中国の大学生だ、にわかには信じられなかった。だが最後に日本が勝つと、彼らはもう欣喜雀躍の大騒ぎ。字幕は簡体字だったので、そこが台湾でないのは確か。いったいどうなってんの?と筆者はわが目を疑ったが、いや〜、サッカーは何が起きるか分からない。嬉しかった反面、あれがフェイク動画でなかったことを祈りたいね。



同じカテゴリー(スポーツ)の記事画像
「SUMO」をオリンピックに
国民的ヒーローはどこへ行く
緑の芝生は元気の素
さらば、アントニオ猪木
勝ち名乗りはロシア語で
戦いは男のロマン
同じカテゴリー(スポーツ)の記事
 「SUMO」をオリンピックに (2024-06-30 11:59)
 国民的ヒーローはどこへ行く (2023-12-30 09:07)
 緑の芝生は元気の素 (2023-01-31 11:54)
 さらば、アントニオ猪木 (2022-10-31 11:55)
 勝ち名乗りはロシア語で (2021-11-30 12:02)
 戦いは男のロマン (2021-02-28 12:16)

Posted by 桜乱坊  at 12:06 │Comments(0)スポーツ

上の画像に書かれている文字を入力して下さい
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。