2025年06月30日
佐賀の県鳥ナンバー2は?

県鳥といえば、各都道府県を代表する鳥のことで、その地方の風土にふさわしい種類が選ばれている。たとえば新潟県ならトキ、富山県ならライチョウ、北海道ならタンチョウといった具合だ。むろん、わが佐賀県とくればカササギで異論はない。なにしろ、このカチガラスことカササギは、日本でも主に佐賀平野一帯に生息し、他県ではめったに見ることのできない珍しい鳥なのだ。それもそのはずで、そもそも16世紀後期に佐賀藩祖・鍋島直茂が、カチカチ(勝ち勝ち)という鳴き声が気に入り、朝鮮半島から持ち帰ったという言い伝えがあるのだ。真偽のほどはともかく、筆者はこの伝承を気に入っている。
山が苦手で平野が大好きなカササギは、広々とした佐賀平野の風景によく似合い、県民にも広く愛されている。サガン鳥栖のエンブレムもこの鳥が登場する。なので、カササギが佐賀の県鳥ナンバー1だということに、異論のある人は滅多にいないはずだ。ただし、ナンバー2は何かと言うことになると、けっこう意見が分かれるんじゃなかろうか。なにしろ自然が豊かな佐賀には、様々な種類の野鳥が生息しているからね。では筆者の意見は?と問われれば、その椅子にぜひオススメしたい鳥がいる。それは、あの真っ黒なカラス…、じゃなくて真っ白で美しいシラサギだ。
とにかく佐賀平野では、至るところでシラサギの姿を見ることが出来る。特に田植えの季節などは、豊かに水を張った水田のあちこちで、静かに佇むシラサギをよく見かける。その姿は、まるで沼に咲いた白い花のように優雅で美しく、田舎臭い佐賀の田園風景に、ちょっとした気品を与えているようだ。歌舞伎の「鷺娘」が真っ白なのも、このシラサギのイメージなのだな。また農業用のクリークが多いのも佐賀の特徴だが、ここでもこの鳥によく出くわすのだ。筆者など農道を散歩中に、用水路からいきなりシラサギが飛び上がり、ビックリさせられたことが何度もある。なんたって、真っ白なものが下から突然フワリと舞い上がるので、つい視線を奪われたりするのだ。
あるいはまた、高い木の茂みをねぐらにして、数十羽でコロニーを作っているのもよく見かけるなあ。こんもりと茂った緑の葉の中に、たくさんのシラサギが止まっている様は、まるで大きな花が咲いたようでよく目立つ。このコロニーのことを「鷺山」と呼ぶらしいが、なかなか洒落た名前だと思う。ただしこの鷺山の下は、シラサギたちが落とした糞で白く汚れているのが、シャレにならないところだ。仮に筆者の家の庭の木にコロニーを作られたら、日ごろ温厚な筆者も「このヤローッ!」とばかり追い出すだろうな。なんたって、臭いがたまらないしね。キレイな花にはトゲがあり、キレイな鳥も糞を落とす、ということだ。
ところでこのシラサギだが、実は1種類の鳥の名称ではなく、全身が白いサギの総称ということらしい。つまりシラサギという鳥は、複数いるってわけだ。日本の場合、ダイサギ、チュウサギ、コサギが該当するそうだが、名前から分かるように、それぞれは大、中、小の大きさで区別出来るようだ。筆者が散歩中などによく見かけるのは、どうやらこのうちのコサギらしい。というのもコサギには脚に特徴があり、黒く細い脚の指の部分だけが黄色いので、すぐにそれと分かるのだ。しかも大きさ的にも、だいたい同じ場所にいるアオサギよりもひと回り小さいので、可愛らしい女性的な印象を受けるというわけ。もっと簡単にいえば、小さくて水の浅いところにいるのがコサギ、大きくて水の深いところでもOKなのがダイサギなのだとか。で、チュウサギはというと、その中間で嘴がやや短いのが特徴らしい。
佐賀平野でよく見かける光景といえば、エサを求めて田んぼや畑といった、農地に出没するシラサギの姿だ。これはおそらくコサギなのだろうが、筆者が県鳥ナンバー2に推す理由でもある。つまり、彼らは人間とうまく共存しているのだ。川から水を引いた田んぼには、タニシなどの貝や小魚、昆虫、カニなどが生息し、彼らの良い餌場となっている。また、田んぼや畑を耕すトラクターの後を、シラサギの群れがついて回る光景も、佐賀県民にとっては見慣れたものだろう。彼らは、土起こしで土の中から掘り起こされた虫やミミズなどを、この時とばかり捕えては食べているのだ。「人間さん、ありがとう」なんて、きっと心の中で彼らはそう呟いているはず。可愛い奴らじゃないの。というわけで農業県・佐賀の県鳥ナンバー2に、筆者はシラサギを推薦します!