2012年04月02日

雨に濡れるJリーグ

雨に濡れるJリーグ

「三寒四温」という言葉があるが、うまいことを言うものだ。これは冬から春にかけての寒暖の変化をいい、三日寒い日が続いたと思えば暖かな日が四日続くというわけ。まあだいたい七日周期で天気が変わる、今どきの気候を絶妙に言いあらわしている。日本列島に寒気をもたらす低気圧と好天をもたらす高気圧が、このサイクルで順々に西から東へ通過するためだが、おかげで毎年この時期はだいたい決まった曜日に雨が降る。

筆者が不思議に思うのは、むかしからなぜかこの雨のサイクルが、必ず週末と重なること。月曜から数日ポカポカ陽気が続いたと思ったら、金曜辺りから何となく空がグズつき始め、土日にかけてドサッと大量の冷たい雨が降ったりする。このサイクルに一度はまると、抜け出すのはなかなか難しい。まるで呪われたような“雨の週末”が、5月になり天気が安定するまで、毎週繰り返されるのだから嫌になる。

困るのはこのサイクルが、例年この時期に開幕を迎えるJリーグの日程と、ピタリ重なること。テレビのサッカー観戦が趣味の筆者にすれば、週末はスカッと爽やかな青空の下で行われる、Jリーグの試合を楽しみたいのだが、悲しいかなそうは行かないんだなあ。何の因果か知らないが、どんなに好天が続いても試合のある土日になると、なぜか必ず雨に見舞われるから不思議だ。これは、むかしからずっとそう。いったいどうして?

おかげで毎試合、選手らは全身びしょ濡れでボールを追う羽目になる。しかも春先の低気圧はけっこう気性が荒く、雨はときに横殴りの氷雨だったりする。だがプロとして戦う選手はまだしも、これで大変なのは観客だ。屋根のないスタンドで雨にも負けず、ビニールのカッパを着て90分間、熱い声援を送り続けるサポーターは、本当に尊敬に値すると思う。こんなスポーツは、サッカー以外にはありえないんじゃないのかな。

それにつけても、われらがサガン鳥栖は実にスタジアム環境に恵まれている。これは地方都市の小クラブとしては、奇跡的といってもいいほど。なにしろJR鳥栖駅の目の前にあるホームは、球技専用のスタジアムで、収容人数は約25,000という丁度良さ。おまけにメインスタンドとバックスタンドは、大きな屋根で覆われており、観客は雨が降っても濡れずにすむ。文句を言ったら、バチが当たりそうなホームなのだ。

やはり雨の多い日本でこの先、Jリーグが発展して行くために必要なのは、こうした屋根付き専用スタジアムの整備だろう。つまり、ハード面の改革だ。各クラブ関係者も、濡れたスタンドを眺めて客入りの悪さを嘆くより、もっと本気で屋根付き専用スタジアムの建設に努力をした方が良い。最高の試合は、最高の舞台から。いつまでも国体用の陸上競技場で満足しているようでは、Jリーグの理想も夢のまた夢というものだ。単純比較はできないけれど、雨の日も満員のドーム球場で試合が出来る日本のプロ野球が、筆者にはときに羨ましくみえる。

それで感心したのが、テレビで観た昨年の女子のW杯ドイツ大会だ。なでしこジャパンの優勝で終ったこの大会は、熱戦続きで大きな盛り上がりを見せたが、成功の要因の一つに、試合が行われた各スタジアムの素晴らしさがあったんじゃないのかな。とにかく日本が試合をしたスタジアムは、そのすべてが感動ものだった。

グループリーグを戦ったボーフム、レバークーゼン、アウグスブルクをはじめ、準々決勝のヴォルフスブルクに準決勝と決勝のフランクフルトと、ふだんはブンデスリーガの試合が行われるこれらのスタジアムは、いずれもサッカー専用の豪華施設。青々としたサッカーコートを見下ろすように、美しい椅子席が四周を取り巻き、客席の上部はすべてが屋根に覆われていた。しかも容器がデカい。サガン鳥栖のホームであるベアスタを素焼きの茶碗だとすれば、これらは有田焼か九谷焼の高級大皿といったところだろうか。

昨年のW杯ではこの客席を多くの観衆が埋め、どの試合でも温かでフェアで気の利いた声援を送っていた。さすがはサッカー王国だと筆者は思ったが、同じ先進国なのに日本とドイツのスポーツ文化は、こうも成熟度が違うものかと感じたりもした。はたして日本が世界に誇れるようなサッカー場が、国内にいくつあるのだろうか? この面で日本は、まだまだ貧しい途上国なのだ。

このごろ、ようやくJ1のガンバ大阪やJ2のギラヴァンツ北九州の地元では、屋根付き専用スタジアム建設の計画が具体化しているが、やっと来た〜!という感じかな。ガンバなどは、今やJリーグを代表する強豪チームでありながら(今年はちと怪しいが…)、これまでずっと屋根なしの古い陸上競技場をホームとして来たし、名古屋グランパスのホームだって似たような陸上競技場だ。韓国や中国、オーストラリアなど、ACLで遠征して来る他国のチームやサポーターは、これらを見ていったいどう思っているのか、一度聞いてみたい気もするね。

サッカーは野球などと違い、雨でもお客を入れて試合を見せるスポーツだ。だが同じ濡れるにしても、報酬が貰える方の選手とお金を払う方の客では、立場はまるで違う。選手は濡れても本望だろうが、客は快適に試合を観る権利があるはずだ。せめて客が濡れないようなスタジアムを用意するのは、主催者側の最低限の義務だと思うんだけどなあ。やはり、最高の試合は最高の舞台から、なのだ。



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Posted by 桜乱坊  at 18:53 │Comments(0)スポーツ

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