2008年04月15日
小城が失ったもの
このところ夕方の散歩のついでに、近くの図書館をよく利用している。筆者のねらいは主にDVDだが、場所柄かお堅い名作映画やドキュメンタリーなどが多いので、その中からなるべく面白そうな奴を探して借りてくる。で、最近見付けて気に入っているのが、NHKの関連会社で制作した『日本の旅─小京都』というシリーズだ。

これは「全国京都会議」に加盟している、50市町ある日本各地の小京都を1話ずつ紹介するもので、全部で5枚のDVDに収められている。1枚に10話ずつが手際良くまとめられており、1話10分で全編通せば100分。ちょうどいい長さなので途中で飽きることもなく、シリーズをこつこつ1枚ずつ借りて来ては、じっくり夜などに観て楽しんでいる。一度にまとめて5枚ではないのは、一回に借りられる枚数に制限があるのと、楽しみをジワジワ持続させるためだ。
このシリーズの中には、佐賀県からは「伊万里」と「小城」が名を連ねている。どちらも佐賀を代表する古都だが、筆者としてはやはり小城の扱い方が気になった。一つは何といってもわが郷里だからだが、もう一つは、この町がはたして「九州の小京都」の名に恥じぬよう撮られているのか、おおいに心配だったから。なにしろ近年、変貌著しい小城の町だものなあ。

結果から言えば編集の勝利というのか、さすがはプロの腕。須賀神社や清水の滝という絵になるシーンから入り、円通寺や星巌寺などの古寺で小城の歴史を案内、最後に銘菓・小城羊羹の製造過程を簡潔に紹介してジ・エンド。10分の中に小城のエッセンスがうまく詰め込まれており、いかにもしっとりとした山あいの古都という映像に仕上がっている。まあ、このDVD自体が約10年前の制作ということもあるが、そこにはまだ小京都らしい面影を残す小城の町が、たしかに息衝いていた。表層的といえば表層的なのだが、やれやれちょっと安心。
ただ、残念なことがひとつ。このDVDには同じ小京都として、その他の町の姿も紹介されているのだが、彼らにはあっても小城だけに無い顕著なものがある。それは城下町らしい家並みだ。町家にしても武家屋敷にしても、筆者が子供の時分にはまだ十分残っていたはずの家並み。それらが今では、ほとんど小城から失われている。
同じ九州の小京都でも「知覧」や「日田」「飫肥」などに比べれば、その差は歴然だ。あちらにはちゃんと町家や武家屋敷の美しい家並みが今も残っており、町ぐるみで大切に保存されている。しかも観光の名所として、目玉の一つにもなっている。いいなあ。その風景を見ているだけで、筆者は羨望を禁じ得ない。
そうなのだ。後悔先に立たずとはいうものの、彼らには残ってなぜ小城には残らなかったのか──。そこのところを小城に生まれた人間も、いま住んでいる人間も、もう一度襟を正して考えるべきなんだろうな。

これは「全国京都会議」に加盟している、50市町ある日本各地の小京都を1話ずつ紹介するもので、全部で5枚のDVDに収められている。1枚に10話ずつが手際良くまとめられており、1話10分で全編通せば100分。ちょうどいい長さなので途中で飽きることもなく、シリーズをこつこつ1枚ずつ借りて来ては、じっくり夜などに観て楽しんでいる。一度にまとめて5枚ではないのは、一回に借りられる枚数に制限があるのと、楽しみをジワジワ持続させるためだ。
このシリーズの中には、佐賀県からは「伊万里」と「小城」が名を連ねている。どちらも佐賀を代表する古都だが、筆者としてはやはり小城の扱い方が気になった。一つは何といってもわが郷里だからだが、もう一つは、この町がはたして「九州の小京都」の名に恥じぬよう撮られているのか、おおいに心配だったから。なにしろ近年、変貌著しい小城の町だものなあ。

結果から言えば編集の勝利というのか、さすがはプロの腕。須賀神社や清水の滝という絵になるシーンから入り、円通寺や星巌寺などの古寺で小城の歴史を案内、最後に銘菓・小城羊羹の製造過程を簡潔に紹介してジ・エンド。10分の中に小城のエッセンスがうまく詰め込まれており、いかにもしっとりとした山あいの古都という映像に仕上がっている。まあ、このDVD自体が約10年前の制作ということもあるが、そこにはまだ小京都らしい面影を残す小城の町が、たしかに息衝いていた。表層的といえば表層的なのだが、やれやれちょっと安心。
ただ、残念なことがひとつ。このDVDには同じ小京都として、その他の町の姿も紹介されているのだが、彼らにはあっても小城だけに無い顕著なものがある。それは城下町らしい家並みだ。町家にしても武家屋敷にしても、筆者が子供の時分にはまだ十分残っていたはずの家並み。それらが今では、ほとんど小城から失われている。
同じ九州の小京都でも「知覧」や「日田」「飫肥」などに比べれば、その差は歴然だ。あちらにはちゃんと町家や武家屋敷の美しい家並みが今も残っており、町ぐるみで大切に保存されている。しかも観光の名所として、目玉の一つにもなっている。いいなあ。その風景を見ているだけで、筆者は羨望を禁じ得ない。
そうなのだ。後悔先に立たずとはいうものの、彼らには残ってなぜ小城には残らなかったのか──。そこのところを小城に生まれた人間も、いま住んでいる人間も、もう一度襟を正して考えるべきなんだろうな。