2008年03月24日

深川家の曵き家

はたして巨大な古民家が動くのだろうか──。そんな素朴な疑問を持ちながら3月22日、筆者は小城町上町にある深川家の曵き家工事見学会に行って来た。深川家は「九州の小京都」小城を代表する古民家で、江戸時代末期に造り酒屋として建てられたという、長い歴史を持つ建物だ。

深川家の曵き家

で、見学会の始まる午後2時に現場を訪れた。なんと、来て見てビックリ。建物は既に正面から見て右に12メートルほど、すっぽりと移動しているではないか。動くものなんだなあ、家って。

この建物は国登録有形文化財に指定される貴重なもので、小京都らしい町家を次々に失った小城にとっては、残された数少ない財産の一つなのだ。今回の移動計画は、建物の前の県道が拡幅されることに合わせ、2メートルほどセットバックするというもの。3月に始まった工事は、移動した建物を江戸期のようにきれいに修復して、10月に完成予定だという。

深川家の曵き家

工事のやり方はまず、建物を右側に動かした後、基礎石を2メートル後方に移し替え。その後、建物を後方に2メートル動かし、最後に左に移動させ基礎石の上に乗せて完了。壁や柱、建具などの化粧直しはその後になるという。本当に大工事なんだなあ。

深川家の曵き家

現場では約40台の油圧ジャッキで床下を持ち上げ、移動用の板に乗せたコロで、そろりそろりと動かすという手法がとられていた。数十トンもの重さの建物だが、コロに乗せて曵くのは人力だというから驚いた。このやり方で、半日で建物は12メートル右に移動したのだという。コロは偉大なりだ。

深川家の曵き家

現場の監督さんの説明によれば、こうした曵き家はかつて江北町あたりでは、炭鉱の坑道掘削による地盤沈下から逃れるため、けっこう事例が多かったとのこと。しかし最近ではこうした大掛かりな工事は珍しいようで、そのせいか放送局や新聞社などの取材も多かった。マスコミからも注目されているようだ。

持ち主の深川さんのお話では、完成後はこの建物を町の人が集まるコミュニティの場にしたいとのこと。素晴らしいアイディアだ。何といってもこの建物は、小京都・小城のシンボルのひとつ。町の人も行政も知恵を集めて、この家を中心にした町おこしにぜひ着手して欲しいものだ。古都・小城の再生はここから始まると信じたい。



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Posted by 桜乱坊  at 11:43 │Comments(0)小京都

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