2023年06月30日

美味いものはいつ食べる?



最近は日本のフルーツサンドが外国人の間でも人気のようだが、この前見たYouTubeの動画では、各国の女性がイチゴサンドを食べる様子を映していた。まあ、どこの国でも若い女性は、こういうフンワリした甘いものが好きなんだな。面白かったのはその食べ方の違いで、人によってイチゴを先に食べてしまうタイプと、最後の楽しみに取っておくタイプと、二つに分かれるのが興味深かったね。これは国籍に関係なく、その人の性格によるものなのだろう。

筆者はもちろん、美味いものは最後に食べるタイプ。イチゴサンドはちと遠慮するとしても、栗羊羹の栗や天ぷら蕎麦の海老天は最後まで残しておいて、フィナーレにガブリと頂くのが好きなのだ。その方がしばらく美味さの余韻を楽しめるし、また食べたいという次へのモチベーションにも繋がるというもの。ケチ臭い食べ方と言われようが、筆者は子供の頃からこれが好きなのだから仕様がない。だいいち、先に美味いものを食べてしまうと、あとに楽しみが残らないと思うんだけどね。

思うに、先に美味いものを食べてしまうタイプは、子供の頃に比較的恵まれた家庭で生まれ、ケチ臭いことを考えなくても、次々と美味いものが出て来る環境に育ったのかも知れないな。つまり、イチゴサンドのイチゴを先に食べたら、残ったパンの部分は無理に食べなくても良いという考え方だ。ケチケチしなくても、美味いものはいくらでも出て来るとなれば、子供の頃から気っ風のいい食べ方が自然と身に付くのだろう。これはこれで悪くはないと思うが、美味い部分だけを食い散らかすような食べ方をすると、世間から親のしつけを問われることになりそうだ。

反対に最後まで美味いものを取っておくタイプは、良くいえば計画的、悪くいえばケチで貧乏臭いとなるのだろう。筆者などはこれにピッタリだが、まあ金持ちじゃない家庭に育った以上、自然とそうなったのも仕方がない。もっとも美味いものが最後に待っているのだから、フィナーレに向けて気分は盛り上がるし、結果として食べ方も計画的で丁寧になる。むろん、食べ残しなどはトンデモナイ。もし美味いものを最後まで取っておいて、いよいよのとき満腹で食べ残したとしたら、世間からはアホと笑われるだろうな。筆者などはそうならないよう、食べ方には気をつけている。

ただし、美味いものを先にという食べ方は、弱肉強食の自然界では理にかなっているようだ。なにしろマゴマゴしていると、美味いものをいつ競争相手に奪われるか分からない。その前に自分の胃袋に入れてしまうのが、サバイバルの絶対条件なのだろう。例えば、草原の王者ライオンはシマウマなどを倒したとき、いちばん先に大人のオスやメスが食らうのは内臓の部分だ。そこは柔らかく、ビタミンなどの栄養が豊富と来ている。つまり、彼らにとってはいちばんのご馳走なのだ。そして残された筋肉などにかじり付くのが、子供のライオンという順番になっているらしい。生存競争は厳しいねえ。こうなると筆者のようなケチ臭いタイプは、どうやら自然界では生き残って行けなさそうだ。

ちなみに人間にとって、焼肉屋で最高のご馳走はロースやヒレといった柔らかな肉の部分で、モツと呼ばれる内臓はそれより下という格付けになっている。つまりわれわれは筋肉が大好きで、本当は栄養価の高い内臓を格下扱いしているわけ。ライオンが聞いたら目を剥いてうなりそうな話だが、美味いものの定義は動物によって違うということか。そういえば、モツの中でも腸のことを「ホルモン」と呼ぶが、一説ではこの語源は大阪弁の「ほるもん」だという。あちらでは捨てることを「放(ほ)る」と言うが、つまり肉屋では牛や豚の腸はもともと捨てるものだったことから、その名が付いたという説だ。これもやっぱり、ライオンが聞いたら目を剥く話だろうな。もっとも、安くて美味いホルモンは筆者も嫌いではない。

しかし、美味いものを最後に食べるには、それまで誰にも奪われないという、前提条件が必要になる。兄弟が多い子供ならまわりは敵だらけだし、自然界の動物もまた同じはず。なので人間だったら一人っ子、動物だったら敵の来ない場所を知ってる生き物が、断然有利となるだろう。なにしろ最後に食べようと取っておいた肉を、その直前に横取りされたらたまったものじゃあない。その点、ヒョウなどは捕らえた獲物を木の上まで引っ張り上げ、そこで悠々と食べるという習性を持っている。高い木の上なら、ライオンやハイエナの横取りを気にせず、じっくり食事が出来るわけだ。高みの見物をしながらの食事は、きっと極上の味がすることだろうな。その気持ち、筆者にはよく分かる。

もっとも、美味いものを最後まで取っておいても、食べてみたらガッカリということもよくある。当て外れという奴だが、この場合はショックも大きい。大事に取っておいた天ぷら蕎麦の海老天が、いざ食べてみたら衣ばかりで中身がショボかったときなど、誰もが人間不信に陥ることだろう。こんなことなら最初に食べて、ショックを和らげときゃ良かったと…。なので、美味いものを最初に食べるか、最後に食べるかの判断は、自己責任ということにしておこう。  


Posted by 桜乱坊  at 12:01Comments(1)食べ物など