2012年07月02日
スカイツリーのある街

〈墨田区の浅草通りから見たスカイツリー〉
シュールというか、非現実的というか、とにかくわが目を疑うような画像を、友人がメールで送って来た。オープンしたばかりの、あの東京スカイツリーの写真だ。いやはやこれは現実のものなのか、ひょっとしてCGによる合成じゃないのか──。信じたくても信じられない光景が、そこには写し出されていた。
送って来たのは神奈川県に住む友人だ。実はかねてより、スカイツリーが完成したら写真を撮って送ってくれるよう、頼んでいたのは筆者の方だった。そこで信義に厚い友人が、さっそく都内墨田区の東駒形あたりまで脚を伸ばし、カシャカシャとシャッターを切ってくれたというわけ。
何しろ、そこは筆者がかつて住んでいた街で、スカイツリーの場所まで歩いて5分。その友人もたしか一、二度、わが旧宅に遊びに来たことがあったと思う(むろんその頃は、スカイツリーの影も形もなかったが…)。交通費もそこそこかかったはずで、やっぱり持つべきものは旧き善き友だ。今度会う機会があったら、ビールくらいご馳走しなきゃいけないなあ。
だがしかし、そこに写された画像を見て筆者は驚いた。とにかく、見慣れた街の変わらぬ風景の中に、まったく異物のような白いスマートな塔がドンと突っ立ていたのだから。しかも、その塔のなんと高くなんと巨大なこと。まさに掃き溜めのツル、まさに畑の中の高層マンション。筆者が長年暮らした東京下町の空を蹂躙する、それはまるで“エイリアン”のような存在に見えたのだ。さすがに俄にこれを信じろといわれても、脳が「No!」と受け付けない…。
まあダジャレはともかく、実物をこの目で見るまでは信じられないのが、人間の定めという奴なのだろう。とはいえ、こうして次々と新しいランドマークを生み出すところが、大都会東京の成長エネルギーなのだな。筆者が東京を離れてからでも、すでに十指に余るこうした構築物が新しく出現している。そのスピードにはたまげる他はない。
数年前に筆者が上京したときには、新宿駅西口に現れたモード学園の「コクーンタワー」に驚いたし、古色蒼然たるプラネタリウムの映像を思い出す渋谷の東急文化会館も、跡地に「渋谷ヒカリエ」という高層ビルが新しく建った。それに九州人にはむかしから玄関口に当たる東京駅だって、今年の10月には長い復原工事が終わり、大正3年の開業当時の姿を披露するのだという。目まぐるしく新陳代謝を繰り返し生まれ変わる都市、それが東京なのだ。
不況下での地方都市の悲しいところは、こうしたエネルギーに乏しいことだろう。知らないうちに次々と新しい施設が建つのが大都会なら、知らないうちに古い建物が次々と消えて行くのが佐賀の実情だ。で、跡地はそのまま駐車場となる。これでは経済効果もへったくれもない。まさしく都市の崩壊だ。
むろん筆者には、スカイツリーみたいな構築物を佐賀にも造れなどと、無茶苦茶なことをいうつもりはない。だが、何か恒常的に人が集まり世間の話題になるようなものは、アイデア次第で創れそうな気もするのだ。何もないところから、日本一のバルーンフェスタを成功させたのが佐賀県人のはず。金はなくとも知恵はある──今こそ、そんな佐賀んもんの本領を発揮するときじゃないだろうか。