2024年04月30日

「震電」を見て来た!

「震電」を見て来た!

先日、筆者は雨にも負けず福岡県筑前町まで遠征し、当地にある大刀洗平和記念館を訪れた。目的は、そこで展示されている旧海軍の幻の試作機、「震電」をこの目で見ることだった。と言ってもこの飛行機、戦時中に作られたホンモノではなく、実物大に精巧に復元されたレプリカなんだけどね──。と、ここまで書けば、ははんあれか!とピンと来た人もいるだろう。そう、この震電は2023年に公開されて大ヒットした、映画『ゴジラ-1.0』の撮影用に作られたもので、主人公の敷島浩一を演じた神木隆之介くんが搭乗したアレなのだ。

しかし、実際にこの飛行機を目の当たりにすると、やはりそのデカさに驚かされる。なんたって筆者はそれまで、小さくスケールダウンしたプラモしか見たことがなかったのでね。実物は主翼の幅が11.114m、先端から後部までの全長が9.76mで、それ自体は零戦とさほど変わらない。ところが、とにかく前脚や主脚が異様なほど長く、ハシゴがないと操縦席に登れないほど機体が高い。つまり単座式戦闘機なのに、見上げるほどデカい飛行機というわけなのだ。

まあ、それもそのはずで、震電の特徴はエンジンとプロペラが機体のいちばん後部にあること。これはエンテ型と呼ばれる飛行機で、主翼を後ろに水平小翼を前に置いた独特の形をしているのだ。このため機首が上がる離陸のときは、ヘタをするとお尻のプロペラが地面を叩く恐れがある。そのために前脚や主脚が長くなったわけだが、それでも1945年6月の1号機の試験飛行のときは、機首を上げすぎてプロペラが地面に接触し、先っぽが曲がってしまったという。やっちまったなあ、大失敗~!

応急措置として主翼にある左右の垂直尾翼の下部に、小さな車輪(練習機「白菊」のもの)が付けられたらしいが、なるほどそういう訳だったのかと筆者も解説文を読んで納得した。というのもこいつのプラモを作った子供のとき、主翼の下にちゃんと一対の主脚があるのに、さらに垂直尾翼にも車輪が付いているのが、不思議で仕方がなかったのだ。というか、これってどう見ても不格好すぎる。筆者が当時作ったプラモは、この応急措置をした試作機を忠実に再現したため、そんな形になったのだろう。むろん量産型では、この車輪はつけない予定だったらしい。記念館に展示中のレプリカ機も、車輪はなくスッキリしている。

この試作機が実際に、福岡県の蓆田飛行場(戦後、米軍により板付空港に改称)で初飛行に成功したのは、1945年8月3日のこと。だがときすでに遅し、同月の15日に日本はポツダム宣言を受け入れ、連合軍に降伏して戦争は終わってしまった。残念ながら震電は実戦投入されないまま、〝幻の名機〟で終焉を迎えたというわけだ。九州人の筆者としては、「九州飛行機」が開発した震電にぜひ大空で大活躍して欲しかったが、山崎貴監督が『ゴジラ-1.0』でその夢を叶えてくれたのが、せめてもの慰めかもしれないな。ちなみに先日読んだネットニュースによれば、九州飛行機の後継会社「渡辺鉄工」は、現在も産業機械のメーカーとして健在らしい。

大刀洗平和記念館は、かつて陸軍の大刀洗飛行場があった場所にほど近く、旧軍の施設やその歴史、飛行機についての展示などが充実している。中でも目玉はこの震電のレプリカ機と、零戦三二型および九七式戦闘機の実物だろう。とにかく、航空機ファンには見逃せないミュージアムなのだ。また、ここから飛び立った特攻隊についての展示もあり、そこに列記された若者たちの名前や年齢を見るだけで、多くの日本人は胸を打たれるはずだ。涙もろい筆者など、こういうのに弱いんだよね。

館内では飛行機の撮影が許されていたので、筆者は当然スマホでバシャバシャ撮ってきた。で、さっそく『ゴジラ-1.0』を観たという神奈川県の友人に、その写真をLINEで送ったところ、すぐに写真付きで返信があった。なんとそこには彼が子供の頃に作ったという、埃だらけのプラモの震電が写っていたっけ。やっぱり男ってやつは、こういうものはなかなか捨てられないんだな。負けてはいられないので、すかさず筆者もうちにある震電のプラモの埃を払い、スマホで撮ってまた送り返したというわけ。いい年をした大人のプラモの見せっこだが、こういうのもたまには良いだろう。震電という〝幻の名機〟は、それだけ男子の夢をくすぐる魅力を持っているのだから。



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Posted by 桜乱坊  at 12:03 │Comments(0)本・映画・音楽など

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