2009年12月22日

たかじんの“発見”



最近すっかり観なくなったテレビだが、筆者が唯一と言っていいほど、必ず観ている昼の番組がある。FBS福岡放送(日本テレビ系)で、毎週日曜日の午後1時半からやっている「たかじんのそこまで言って委員会」がそれだ。この番組、とにかく見始めるとクセになるほど面白い。たまに特番などと差し替えられたり、見損なったりした場合などは、日曜の午後がずいぶんつまらないものになる。

内容は、政治・経済・社会問題から世俗的なことまで、何でも扱うトーク番組なのだが、出演者の顔ぶれがまず強烈だ。司会は、歌手でタレントのやしきたかじんとアナウンサーの辛坊治郎。パネリストには評論家の三宅久之、落語家の桂ざこば、また勝谷誠彦、宮崎哲弥といった面々が並び、準レギュラーも田嶋陽子、金美齢、村田晃嗣など、一言居士ばかりだ。

この番組の最大のポイントは、制作が大阪の読売テレビということだろう。つまり何がスゴいかといって、とりすました東京のテレビ局では絶対に制作も放送も出来ない、過激でストレートな言論が遠慮のかけらも無く行き交うこと。アクの強い大阪風味が、この番組の麻薬のような魅力なのだ。独断と偏見、本音と毒舌──。上辺だけのきれいな言葉は、ここではたちまち論破され罵倒されてしまう。気の弱い出演者には、発言の機会さえないもんなあ。

なので、この番組を仕切る司会者の役割はとても重要だ。特に筆者が感心するのが、やしきたかじんの存在だ。実はこの番組、全国で放送されているにもかかわらず、関東地区は例外的に放送されていない。筆者がこの番組の存在を知ったのは、住んでいた東京から佐賀に移ってからだった。それがつまり、“たかじん発見!”のときだったってわけ。いや、オーバーな言い方ではなく、人は東京の文化圏を離れて初めて、やしきたかじんという才能と遭遇することになる。

それほど、たかじんは東京では無名の存在なのだが、むろん筆者も名前と顔だけは知っていた。ただし、あまりいいイメージじゃあない。柄の悪いコテコテ関西限定の毒舌タレント──どうせそんなものだと思っていた。ひょっとしたら半分ヤクザじゃないか、とも。だからこの番組を見始めるまでは、筆者もたかじんの顔や大阪弁に少なからぬ嫌悪感を持っていた。

だが、食わず嫌いとはこのことだろうか。この番組での彼は、意外にもクールな紳士だった。そればかりか、頭がキレてあんがい控えめで、ときに露悪的に開き直ってみせる度胸もある。なにより話が抜群に面白い。険悪になりがちな出演者間の舌戦も、まるで弄ぶがごとくコロコロと掌で転がし、スタジオを笑いの渦に巻き込んで行く。なるほど大阪弁はこういうとき便利だなあと、筆者は何度感心したことか。

むろん相方、辛坊治郎の進行の巧みさもあるのだろうが、この番組の醸し出すあけすけな爽快さは、たかじんのキャラクターに負うところが大きいと思う。硬軟両刀、緩急自在、清濁併呑──何というか、それがこのタレントの最大の魅力なのだろう。まさに“発見”だったなあ。

ところで、この「委員会」と同じようなトーク番組に、東京のテレビ朝日制作「ビートたけしのTVタックル」がある。こちらも人気番組であり、パネリストの顔ぶれも三宅久之氏を始めかなり重複している。にもかかわらず、トークの盛り上がりやスリル感という点で、まるで「委員会」に見劣りしてしまうのはなぜだろうか?

おそらく「TVタックル」の方は、局の縛りがきついのだろう。例えば、舌戦がヒートアップし発言者が本音を語ろうとすると、決まって司会役の阿川佐和子や大竹まことが茶々を入れて、話を横道にそらしてしまう。発言者も視聴者もそこでイライラをつのらせる羽目になるのだが、おそらくその辺りが東京の番組の限界なのだろう。ついでに言えばビートたけしも最近は毒性が薄れ、文化人的発言が鼻についてあまり面白くはなくなった。

この「委員会」という番組、もし関東地区で放送されればおそらく高視聴率を上げ、筆者と同じように人々はやしきたかじんという才能を“発見”することだろう。だがそうはならないのは、たかじん本人がそれを認めないからだという。分かるなあ、その気持ち。なぜなら、仮にこの番組が東京で放送されたとしても、キワドい話はすべてカットされてしまい、本来の面白さは半減されてしまうはずだから。毒にも薬にもならないテレビのつまらなさは、たかじんならずとも大人はみんな分かっているのだ。



Posted by 桜乱坊  at 17:50 │Comments(0)TrackBack(0)身辺雑記

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